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柴崎友香「見とれていたい―わたしのアイドルたち」書評 世の宝を賛美する目線芸

評者: 平松洋子 / 朝⽇新聞掲載:2010年02月07日
見とれていたい わたしのアイドルたち 著者:柴崎 友香 出版社:マガジンハウス ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784838720439
発売⽇:
サイズ: 19cm/237p

見とれていたい―わたしのアイドルたち [著]柴崎友香

 二十五年くらい前、都心のビルでエレベーターを待っていると、開いた扉のむこうがきらきら輝いていた。そこに立っている松坂慶子さんには後光が射(さ)していました。いまでも、松坂慶子さんが目を輝かせながら「まあ」「あら」と言うとき、わたしはその稀(まれ)な美女ぶりにうっとりして、感動さえおぼえる。
 見とれる視線はひとを幸福にしてくれる。奇跡みたいなかわいさ、美しさに心撃ち抜かれて柴崎さんが綴(つづ)るのはチャイナドレスのマギー・チャン、バンビ顔のペネロペ・クルス、美神カトリーヌ・ドヌーブ……十代からオーバー70まで「素敵な女の子はこの世の宝!」。
 「目線芸」とでも名づけたい蠱惑(こわく)的なエッセイだ。女目線でも男目線でもなく、クールかつ的確に分析しても、“上から目線”の嫌みやひがみがぜんぜんない。読んでいると、掌(てのひら)にのせた宝石を胸ときめかせていっしょに見つめている気分。
 栄えある日本人枠には安室奈美恵と松坂慶子(うれしい!)。巻末の「美女観測日記」で、広田レオナを「女があり余っている顔と体型」と賛美するセンスにも、ぐっときた。
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 マガジンハウス・1470円