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予習という病 [著]高木幹夫、日能研

[評者]耳塚寛明(お茶の水女子大副学長・教育社会学)

[掲載]2010年01月31日

[ジャンル]教育 社会

表紙画像

■未知へ対応できる未来型学力を
 【予習病】すでに定められたカリキュラムに固執し、未知の事柄をまだ教わっていないがゆえに否定する精神の傾向。本書は、この定義で始まり次の定義で終わる。【未知への準備】予測できないものに出会ってもしっかりと向き合い、必要な対応ができること。二つの言葉が、この本のすべてである。
 未来型の学力、子どもたちの頭も心も動かし続ける授業、子どもたち自身が知識のつながりや構造を作り上げる能動的な学びはいかにして可能か。公立学校ではおよそ不可能な実践もあるが、紹介されている日能研の取り組みに秘められた革新の精神に学ぶべきところは多い。
 著者高木幹夫氏は、首都圏を中心に展開する中学受験塾「日能研」の代表。公教育のすき間で、過熱する受験競争時代が生み、受験低年齢化が育てた徒花(あだばな)は、いまや未来型学力の王道を語り、理想実現のための実践を敢然と実行する。しょせん商売などと侮ることは不遜(ふそん)にほかならない。「受験準備学力だけで学力を語ったらダメですよね」という著者の問いかけに、教育界の本流は、答えるべき言葉と実績を持ち得ているだろうか。
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 講談社現代新書・756円

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