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在郷軍人会―良兵良民から赤紙・玉砕へ [著]藤井忠俊

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2010年01月31日

[ジャンル]歴史

表紙画像


■国の矛盾集約する35年の歴史

 在郷軍人会は1910年に設立され、45年8月に解体した。本書が35年の歴史を正面から見据えてその正直な姿を私たちの前に示した。軍事ファシズムの後方部隊との私の理解も誤りではないと確信できたが、同時にこの組織は試行錯誤を続けつつ肥大化し、最終的には在郷軍人が玉砕要員となるプロセスにこの国の矛盾が集約していることを教えている。
 もともとは日露戦争後にドイツの同様の組織を参考にして在郷軍人を良兵良民へとの発想で誕生した。著者はその主意は“国民の元気”にあったといい、良兵を軍で、良民を町村で養成する仕組みだった。ところがこの組織は大正デモクラシーで変容する。この部分の分析が新鮮だ。米騒動、労働争議、小作争議での意識高揚を恐れる軍事指導層は国家主義で対抗する。
 その思想が総力戦体制へ進むのだが、良民をつくって良兵をというので学校教育、青年教育に軍事が入りこむ。太平洋戦争末期には在郷軍人の召集兵が350万人に達する異様な戦争国家になる。彼らは何の目的で集められたのかと問う著者の姿勢に心底からの共感を覚える。
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 岩波書店・2940円

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