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ロボットとは何か―人の心を映す鏡 [著]石黒浩

[評者]瀬名秀明(作家)

[掲載]2010年01月24日

[ジャンル]人文 科学・生物 新書

表紙画像


■「人とは何か」という問いに迫る

 人はいつも自分と似ているものに強い関心を抱き、そこに心を見いだし、だからこそ違和を感じ、怖(おそ)れ続けてきた。現代のヒト型ロボットがそのような存在である。著者は日本が生んだ認知発達ロボティクスの提唱者のひとりであり、愛娘(まなむすめ)や自らを象(かたど)ったアンドロイドをつくり、ロボットと人間が共演する劇を平田オリザらと発表し、乳幼児のように立って歩くことから学び育ってゆくヒト型ロボットをつくることで、「人とは何か」という問いに迫ろうとする。
 文章はわかりやすく、そして著者の目指すものは深い。我々はコミュニケーションを定量・定性化する術(すべ)を持たないため、アンドロイドが実際にいかなるインパクトを人に与えているのか、客観的な評価は難しい。そこで著者は(おそらく)あえて直観的な断定文を随所に盛り込むことで自らの想(おも)いを読者に提示してゆく。だがロボットを人間そっくりにすればするほど、私たちはいまだ人間の本質に遠く及ばぬ認知コミュニケーション問題しか炙(あぶ)り出せないのだと感じてしまう。本書はその限界を超えようともがき、挑戦し続ける工学者の、未来への果敢な一歩である。
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 講談社現代新書・777円

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