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ホロコーストからガザへ―パレスチナの政治経済学 [著]サラ・ロイ

[評者]小杉泰(京都大学教授)

[掲載]2010年01月17日

[ジャンル]政治 経済 国際

表紙画像


■極限まできた「反開発」を実証

 パレスチナのガザ地区は1年前にイスラエル軍の猛攻撃を受けて、公共施設も多くの人びとの家屋や生活も破壊された。今でも封鎖が続き、生存を国際的な人道的援助に頼っている。これは実は、一時的な悲劇でも単なる人道上の問題でもない。1967年の占領以来の「反開発」が極限まできた、と著者は実証的に示している。反開発は、低開発どころではなく、外部からの資金や介入で地場経済が衰亡する状態を意味する。
 ガザ地区にはもはや何の工場も産業もなく、仮に将来独立しても国の中身となる経済は消失している。名ばかりの自治は、占領状態の現実を隠すにすぎないのである。政治経済学の立場からガザ地区を熟知する唯一の国際的な専門家の指摘は鋭い。
 ユダヤ系アメリカ人である著者は、ナチによるホロコースト(ユダヤ虐殺)を生き残った者の娘として、相手がイスラエル政府でも悪に対して異議を申し立てることが、自分の務めであるという。自伝的な語りの部分も胸を打つ。
 日本での講演がもとになっており、編訳者の丁寧な解説もあって読みやすい。
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 岡真理・小田切拓・早尾貴紀編訳、青土社・2730円

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