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ロミー 映画に愛された女―女優ロミー・シュナイダーの生涯 [著]佐々木秀一

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2010年01月10日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

表紙画像


■二十世紀の業背負って生きた女性

 一九八二年に四十三歳で亡くなった女優。ロミー・シュナイダーは二十世紀の業を背負って生きた女性ではなかったか。
 本書はその軌跡と時代背景、そして出演映画の詳細について丹念に記録した書だ。文中にはたとえば自らがナチスの歴史に無知であることを恥じ、舞台女優であった母親がヒトラーと関係があったのではとの思いに取り憑(つ)かれ、「ナチスに追われたり、ナチスに殺される女を演じること」は、「罪滅ぼし」であるとともに「復讐(ふくしゅう)」だったのではとの著者の見解も示される。
 舞台人の家系に列なり、十五歳で映画に出演してから、映画産業がもつ残酷な商業性の中でヨーロッパを代表する女優へと登りつめる。著者は資料を駆使して実像を追う。幾人もの男性との満たされぬ愛、一人息子を十四歳で失う悲しみ、演技者と自己との不透明な境界、六十本余の出演映画の果てに自殺とも自然死ともつかぬ形でその生を終える姿に著者の筆は哀惜に満ちていて、心が打たれる。
 日本人の手でこれほど充実した評伝が編まれたことに、泉下のロミーと世界のロミーファンは驚嘆するだろう。
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 国書刊行会・3150円

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