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ブランドはNIPPON [著]川島蓉子

[評者]江上剛(作家)

[掲載]2010年01月10日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■革新的なもの作りに再生の道が
 日本はデフレに陥り、メーカーは低価格競争を繰り広げている。このままでは日本のもの作りが壊れる。著者は、ファッションデザイナーの皆川明、テキスタイルデザイナー須藤玲子、クリエーティブディレクター緒方慎一郎、新しいライフスタイルを提案する真城成男、和装小物の老舗(しにせ)を継承する美濃部順一郎の5人の仕事とインタビューを通して、その再生について示唆に富む提言を試みている。
 素材の布作りにまでこだわる皆川明は、日本のもの作りは高度な技術を駆使し、デザイナーの要望に柔軟に対応してくれる能力が高いが、そうした素晴らしい技術を伝える努力を怠っていると指摘する。そして「高い価値を追求し続けて、それを提案していけば、むやみな価格競争には陥らない」と言う。
 また須藤玲子は、尊敬する柳宗理の「日本の今日の技術と、材料を使って、日本人の用途のために真摯(しんし)にものを作る」という言葉通りの姿勢を貫く。著者は須藤を見て、他国が追いついてきたら、日本はその一歩先を進むことが重要だと言う。須藤は、ホテルのマンダリンオリエンタルの内装を、日本の伝統技術で織り上げた布で飾った。この事実に、著者は外資系企業ではなく、日本企業こそ日本のもの作りに誇りを持ち、評価し、活用するべきだと提言する。
 低価格製品が市場を席巻する状況はいつまでも続かない。なぜなら人は、豊かな気分、上質な心地を味わいたいという欲望を持っているからだ。そこにこそ、品質にこだわる日本のもの作りが生きる道がある。しかし伝統に埋没するのではなく、5人のような革新的なデザイナーたちとの出会いと、NIPPONブランドの良さを「伝えるべき人に、いかに的確に伝えるか」がますます重要になっている。こういう著者の指摘は今日的であり、傾聴すべきだ。
 本書は特に政治家や企業経営者に薦めたい。日本のもの作りの付加価値の高め方や地方に埋もれている伝統技術などの再生のヒントが豊富に詰まっており、デフレ脱却の指南書となりうるからだ。
 評・江上剛(作家)
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 文芸春秋・1800円/かわしま・ようこ 61年生まれ。著書に『伊勢丹な人々』『ブランドのデザイン』など。

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