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日本人の坐り方 [著]矢田部英正 

[評者]四ノ原恒憲(朝日新聞記者)

[掲載]2011年03月27日

[ジャンル]社会 新書

表紙画像


■多様なスタイル排した「正座」

 「正義」「正論」「正統」……。頭に「正」をいただく文言には、どこかうさん臭さを感じ取ってしまう癖がある。でも「正座」は、日本文化の長い伝統に支えられた「正統」な座り方と、何となく信じていたが、本書で見事に覆された。
 著者は、過去の絵、写真、文書をつぶさに調べ、平安時代から江戸初期まで、「正座」は極めて珍しい座り方であった、と結論づける。立てひざで茶を点(た)てることも許されたし、正式な場でも、男女を問わず多様な座り方をしていた。
 江戸時代になり、上級武士の正式な作法として定められ、それが長い時間をかけて、幕末には庶民の一般的な座り方となった。明治に入り、教育に取り入れられた「礼法」が硬直した軍国思想に絡め取られるなかで、今の地位が確定した、という。
 著者は、「正座」に異をとなえているわけではない。「正」となった瞬間、多様な座り方が排除され、中世の茶人が重んじた「崩しの美学」など、日本文化が持っていた幅が忘れ去られたことを悲しむ。声高な日本文化論ではないが、身近な、まさに低い視線からの快論に拍手。
 四ノ原恒憲(本社編集委員)
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 集英社新書・756円

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