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家族新聞 [写真]浅田政志 [文]共同通信社 

[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)

[掲載]2011年03月06日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 社会

表紙画像

■家族の形は多様、肩の力抜いて

 日本は「家族」の問題でゆれ続けている。幼児虐待、引きこもり、介護、高齢者の所在不明……。すべては家族のあり方の揺らぎが関係している。
 社会的関係性やコミュニティーが流動化する中、育児や介護を孤立した家族(特に女性)が抱え込み、疲弊するケースが後をたたない。国家によるセーフティーネットには穴が開き、十分な所得がなければ市場のサービスを受けることができない。子育ての環境が整わず、不安が蓄積される中、少子化は依然として進行し続けている。
 日本の家族はどこへ向かっているのか。本書は、注目の写真家が今の家族を撮り、新聞記者が文章を添えたフォトブックだ。
 現代日本では核家族化・単身化と逆行する形で、大家族を理想とする人が増加しているという。これは古きよき時代への郷愁ではない。子育てや介護の苛酷(かこく)な現実に対する切実な願望と捉えるべきだ。
 本書には、新しい家族形態を模索する人々が紹介されている。コレクティブハウス(部屋の一部を共有する集合住宅)、里子・里親、熟年結婚、事実婚、隠居……。彼らは、これまでの家族を見つめなおしつつ、真剣に「新しい家族」のあり方を引き受けようとしている。その苦悩と葛藤の隙間から、笑みがこぼれる。
 日本の家族は元来、血縁主義が薄く、養子縁組が発達してきた。家族には、血縁以外の共同性が関与してきた歴史がある。
 しかし、現代社会では特定の家族観に拘束され、規範意識の強さから、逆に家族を傷つけるケースが絶えない。すべてを家族で解決しなければならないという思いが、家族や自分への暴力となって噴出してしまう。
 育児や介護を家族構成員だけがすべて負担することは不可能だ。公的サービスを活用しつつ、社会の相互扶助機能を高めていかなければならない。そのためには、家族のあり方と真剣に向き合わなければならない。
 本書が示す家族形態の複数性・多様性によって、家族はいろいろありえることを知ってほしい。そのことによって、肩の力が抜ける人が大勢いるはずだ。
 (評・中島岳志 北海道大学准教授・アジア政治)
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 幻冬舎・1575円/あさだ・まさし 79年生まれ。写真家。『浅田家』で木村伊兵衛写真賞受賞。

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