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グローバルプレイヤーとしての日本 [著]北岡伸一

[評者]久保文明(東京大学教授)

[掲載]2011年03月06日

[ジャンル]政治 人文

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■世界史の運命に手をかける国とは

 本書の目的は、日本が今後の方向を誤らないために、現状を総点検することである。日本はどこに進むのか。
 かつてマックス・ウェーバーは、世界史の運命に手をかけることが大国の権利であり義務であると述べた。著者は、日本は今後も「世界史の運命に手をかける」ことができるのか、と問う。
 今のままでは、日本は快適な国ですらなくなってしまうと著者は懸念する。しかも、世界は危ういバランスの上に成り立っているのであり、日本のような大きな潜在力を持つ国は、その秩序の維持のために積極的な役割を果たす義務がある。そのような役割を果たすことができるかどうかの鍵は、「総合的なグローバルプレイヤーとなることだ」というのが本書の出発点の仮説である。
 国連での安保理改革の試み、日中歴史共同研究については、著者自身の外交現場での経験を交えて記されてあり、それが臨場感を提供し、説得力を高めている。
 アフリカ支援に関しては、日本は大きな可能性を持っていながら、ODAを縮小させ、その可能性を自ら小さくしていると本書は嘆く。昨年秋の尖閣諸島をめぐる事件については、中国が自称する「平和的台頭」には容易に期待できないと指摘し、防衛政策の強化を説く。本書によれば、防衛の要諦(ようてい)は、「侵さず」「侵されず」「脅さず」「脅されず」に尽きる。
 本書は集団的自衛権を認めること、国際平和協力活動のための恒久法を制定することなどを提言するが、現実の政治の世界ではまだ実現する情勢にはない。著者の議論や提案に対して、左右の立場から批判もあるであろう。ただし、その場合には、著者と同水準の論拠と将来構想を用意した上で反論すべきであろう。情緒的反対、あるいはひとたび自衛隊を海外に派遣すれば戦争につながるといった硬直的な発想に基づいた反対が、いまだに多いように思われる。日本の将来にもっとも大きな責任を持つ政治家の方々にぜひとも熟読して欲しい。
 (評・久保文明 東京大学教授・アメリカ政治)
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 NTT出版・2415円/きたおか・しんいち 48年生まれ。東京大学教授。『自民党——政権党の38年』など。

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