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なぜ科学を語ってすれ違うのか―ソーカル事件を超えて [著]ジェームズ・R・ブラウン

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2011年02月20日

[ジャンル]人文 科学・生物

表紙画像

■なぜ科学を語ってすれ違うのか 
 社会における科学、論争後の問い


 ソーカル事件とは、米国の物理学者ソーカルが1996年、ポストモダン派の雑誌に投稿した、科学的な装いのパロディー論文がまんまと査読を通過して掲載され、ポストモダン派が面目をつぶした事件だ。それが、いわゆる「サイエンス・ウオーズ」に火をつけ、科学者と、知識に客観性はなく社会の構造物と考える科学論の研究者との間で激しい論争になった。
 本書は、科学、認識論、政治が絡まったこの論争を、一段落した2001年にカナダの科学哲学者が「親科学的左派」の立場から読み解いたものだ。ねらいは「誰が科学を支配するのか」という原題にある通り、よりよい社会のために科学はどうあるべきか、にある。
 最終2章は今後への提言で、「科学の民主化」の章ではたとえば、科学に参加する人の多元性の重要性や、科学者の多様性や人々が科学を楽しめるようにする必要性が説かれる。
 この論争は、日本ではあまり話題にならなかったが、社会における科学と科学者のありようは、今の日本にとっても重要な課題だ。じっくり読みたい一冊である。
 辻篤子(本社論説委員)
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 青木薫訳、みすず書房・3990円

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