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短篇で読むシチリア [著]レオナルド・シャーシャほか

[評者]田中貴子(甲南大学教授)

[掲載]2011年02月06日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■近代史垣間見る、不思議な匂い

 「長靴」の先っちょの島、シチリアは、数多くの作家を生み出した土地である。3千年の長きにわたってさまざまな異民族の支配を受け、独特の文化を育んできたことが、シチリア人気質というべきものを作り上げたのだろう。そのためか、シチリアの作家の小説や戯曲は、世界文学の流れとはまた異なった、ちょっと不思議な匂いや奇妙な味を感じさせるものが多い。
 本書は、デ・ロベルトからピランデッロ、ヴィットリーニまで、外国語文学のファン以外にはあまりなじみのないシチリアゆかりの作家の短篇(たんぺん)集である。それも、シチリア文学を愛する編者による初訳作品ばかりだ。これはお買い得。
 中でも、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカへ移住した人々を主題にしたピランデッロ「ホテルで誰かが死んだので……」とマフィアの親分が語る体裁で書かれたシャーシャの「言語学」は、近代シチリア史の一面を覗(のぞ)くようで興味深い。
 本文には詳細な注が付けられているが、それが単なる注に終わらず、シチリア文学を読むうえでの基礎知識の役割を果たしてくれるのも嬉(うれ)しい。
 田中貴子(甲南大学教授)
 (武谷なおみ編訳、みすず書房・2940円)

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