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コモンズの地球史―グローバル化時代の共有論に向けて [著]秋道智彌

[評者]植田和男(東京大学教授)

[掲載]2011年01月30日

[ジャンル]科学・生物 社会

表紙画像

■海・森・川… 自然資源は誰のもの

 川辺の森林の木を伐採して利用する近隣住民は、無制限に木を切っては森林が死に絶えてしまうので、木を切ってよい人たち、切ってよい上限の本数等を相談して定めたりする。このような自然を管理・維持する仕組みがコモンズである。水中の樹木を求めて、魚が季節的に産卵に遡上(そじょう)してきたりすると、伐採の規則は一段と複雑になる。本書は著者のフィールドワークに基づいて、海、森、川にまたがって地球上のありとあらゆるコモンズの事例をわかりやすく解説している。ところで、多くの伝統的なコモンズは市場経済の発展、グローバル化の進展の中で危機にひんしている。コモンズの本来の機能が無視されたり、人間と自然の関係が一段と複雑化するからである。しかし、この問題の適切な解決のためには、伝統的なコモンズに凝縮されているような自然と人間との様々な相互作用を、まずもっと虚心坦懐(たんかい)に理解しようとすることが大事なようである。川に絞って、ダム建設等河川行政の役割も含めて同様の問題を扱った『社会的共通資本としての川』(宇沢弘文・大熊孝編、東大出版会)もおすすめしたい。
 植田和男(東京大学教授)
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 岩波書店・3360円

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