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日本の解放区を旅する [著]鎌田慧

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2011年01月09日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■矛盾に目をつぶらない姿勢

 本書を読んでの率直な感想は日本社会が二重構造になっていることだ。光と影という構造ではなく、現実のシステムやそれを支える理念がすべて逆手にとられて、そこに非人間的空間が生まれているとの意味である。著者によれば「解放区」とは、その空間の中で闘っている「勇気ある生活者」を指し、抑圧に抗しながら「精神の解放」をイメージする場所だという。
 フリージャーナリストとして自立四十年余、著者は矛盾に目をつぶらないとの姿勢を堅持する。本書が採りあげているのは沖縄、原発、生活保護、冤罪、ごみ処理、非正規雇用からアニメ、美容界までと幅広い。印象に残る表現が多い。普天間を語るときの沖縄は「いまだ捨て石である」、JR西日本に問う「事故現場を私物化できるのか」、日の出町のゴミ処分場差し止め訴訟での「裁判官の石頭と怯懦(きょうだ)が、時代を誤らせている」、過労死裁判での企業寄りの労働監督官こそ「日本の労働行政の伝統的悪習」、コンビニのおにぎり大量廃棄という「罰当たり」商法など。著者の怒りをどう受け止めるか、実は私たちの目が試されている。
 保阪正康(ノンフィクション作家)
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 七つ森書館・2100円

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