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火山と地震の国に暮らす [著]鎌田浩毅

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2011年08月07日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像


■噴火は「忘れた頃」のさらに後

 洞爺湖温泉は1910年の有珠山の噴火で誕生した比較的新しい温泉だ。以来3度目となった2000年の噴火は温泉街に迫り、今度は観光に打撃を与えた。今年初め、北大の火山研究者の案内で現地を訪ね、思うに任せぬ「火山の国」を実感した。
 そして今、私たちはまさに本書の題名通りの現実に向き合っている。巨大地震の到来が懸念される一方、各地で火山活動も活発化している。過去には巨大地震後に富士山が噴火した例もあり、油断はできない。自然の猛威を前に、どう命を守るのか。
 火山研究の傍ら「科学の伝道師」の標語を掲げる著者は、自然とうまくつきあうには科学を知ることが欠かせないとする。本書では、今年1月に噴火した霧島火山・新燃岳も含め、内外の主要な火山の研究の現状と限界、防災上の課題を簡潔に解説し、合わせて、科学を減災にどう生かすか、を語っている。
 大切なのは、大地の動きを追う地球科学特有の視点だという。つまり、巨大な地球を46億年の歴史の中でまるごととらえる「長尺の目」と、火山のエネルギーのように人間の力をはるかに超えるものへの「畏敬の念」だ。自然と共生するためには、私たちにも同じ視点が欠かせない。
 海外の例も興味深い。
 フィリピンでは1991年、火山学者の懸命の説得で、ピナトゥボ火山の大噴火の直前に米軍基地から1万5千人が避難した。渋る司令官をついに動かしたのは、フランスの著名な火山研究者夫妻を含む43人が犠牲になった雲仙普賢岳の大火砕流だったという。ピナトゥボの大噴火はその9日後のことだ。
 忘れたころどころか、それからさらに長い時間がたったころにやってくるのが火山噴火だという。「想定外」などといわず、どうつきあうか。考えるきっかけにしたい。
 市民のための科学のあり方についても示唆に富む。
    ◇
 岩波書店・1995円/かまた・ひろき 55年生まれ。通産省地質調査所などを経て京都大学教授。

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