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Made by Hand―ポンコツDIYで自分を取り戻す [著]マーク・フラウエンフェルダー

[評者]山形浩生(評論家)

[掲載]2011年08月21日

[ジャンル]社会

表紙画像

■自作で世界の仕組みを理解する

 最近のビジネス書を見ると、パソコンやインターネットの世界はマイクロソフト、アップルやグーグルなどの企業活動だけしかないかのようだ。でも実際にそれを支えたのは多くのアマチュアハッカーたちだ。かれらが自由闊達(かったつ)にプログラムを書き、付属機器を組み立て、ウェブページを作る中で、応用範囲が広がり、産業としても成立するようになった。
 が、目新しさも薄れるにつれ、そうしたホビイストたちが目を向けつつあるのが、物作り工作の分野だ。シンプルなコンピューターをスイッチ代わりに使った各種の小物やロボットから、いまや料理や編み物裁縫まで含む一大運動となっている。
 本書は、そうした流れの一環として様々な自作活動に挑戦してきた著者のDIY経験を綴(つづ)った本だ。
 挑戦の幅は実に広い。野菜作り、養鶏や養蜂から子供の自家教育、コーヒーマシンから手製ギターに紅茶キノコ。それぞれの経験談も楽しいのだが、本書を何より興味深いものにしているのは、その哲学だ。自作は、世界の仕組みを理解し、世界との関わりを深めるための手段でもあるのだ。失敗してもかまわない。いや、失敗しなくてはならない。そこにこそ、工夫と学習の余地があるのだから。
 首をかしげたくなる試みもある。が、著者がなぜそれに関心を持ち、どう失敗を重ね、そこから何を引き出したかというのは明確。多くの試みは失敗したまま。でもだからこそ、成功しておしまいというお話にとどまらず、著者の得た世界の理解が見えてくる。
 本書を読むと、自分でも何か新しいことを試してみたくなるはず。そしていま急成長しつつあるこの分野の醍醐味(だいごみ)もわかるだろう。いまのうちに、本書で是非それを味わっておこう。意外とここから、インターネットに続く明日の一大産業も生まれるかもしれませんぞ。
    ◇
 金井哲夫訳、オライリー・ジャパン・2310円/Mark Frauenfelder 60年生まれ。雑誌「Make」編集長。

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