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「持たざる国」の資源論―持続可能な国土をめぐるもう一つの知 [著]佐藤仁

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2011年08月21日

[ジャンル]政治 人文

表紙画像

■「日本は資源が乏しい」のか?

 「資源」という言葉は、そう古い言葉ではないのだそうだ。日清、日露の戦間期にあたる1900年前後から使われるようになり、辞書に載るのは昭和に入ってから。日本は資源を持たない国だ、という概念が日露戦争後に定着し、同時に日本軍の大陸侵出が本格化していった。
 資源は日本の外にある、だから、外から取ってこなくてはならない。それが、敗戦までの日本の資源観であり、植民地放棄を唱えた石橋湛山は例外的な存在だった。
 47年、経済安定本部に設置された都留重人らの資源委員会は、国内の資源に目を向け、その「生産力の保全」を総合的に構想する。60年まで日本は、エネルギーの半分以上を国産で賄っていた。
 ところが、70年代以降、エネルギー消費が爆発的に増え、自給率は原子力発電を算入しても2割を切る。海外での原料確保に力点が移り、石炭や森林など国内の豊かな資源は放棄されて現在に至る。
 これでいいのか。本書は日本の資源を総合的に把握する資源政策の創出を主張する。
 著者はこう述べる。
 「そもそも『資源小国』という言説が一時期あまりに支配的になったために、存在しなかったはずの『不足』が次々と作り出されているという事実に、もっと正面から向き合わなくてはならない」
 3・11以後、「日本は資源が乏しい」ということが、主に原発推進派によって改めて強調されてきた。しかし、本当にそうなのだろうか。電力供給が削減されれば主婦がデモを始める、という主張もかつてあったが、節電の炎暑、原発反対のデモは起きても、「もっと電気を」のデモは起きていない。
 本書は、震災からの復興の道筋を示す即効的な「実用書」ではない。しかし、こういう時こそ遠回りでも歴史に学ぶことが必要だ。そのための格好の一冊である。
    ◇
 東京大学出版会・2940円/さとう・じん 68年生まれ。東京大准教授。著書に『稀少資源のポリティクス』。

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