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「ユニコード戦記」書評 多様な言語文化守る善戦苦闘

評者: 辻篤子 / 朝⽇新聞掲載:2011年08月21日
ユニコード戦記 文字符号の国際標準化バトル 著者:小林 龍生 出版社:東京電機大学出版局 ジャンル:コンピュータ・IT・情報科学

ISBN: 9784501549701
発売⽇:
サイズ: 20cm/248,35,6p

ユニコード戦記―文字符号の国際標準化バトル [著]小林龍生

 ユニコードとは、コンピューターで使われる文字コードの国際標準だ。そこにいかに漢字を取り込むか。そのための活動記録である。
 母体は米企業を中心とする任意参加の民間団体だから、各国が1票ずつ持つ国際機関とは違って、参加して主張しない限り、日本語への配慮は期待できないし、利害も対立する。戦いたるゆえんだ。
 著者はワープロソフトの一太郎で知られるジャストシステムから派遣されて議論に参加、関連する会議の議長として世界中から集まった猛者をさばくまでになる。
 言語文化の多様性を説くにもまず英語、という現実に直面し、40の手習いで苦手の英語を習得した過程、また「歩く国際標準」たる大先輩に伝授された「傷を負わせたら殺せ」などマカロニウエスタンばりの戦い方などがユーモラスにつづられる。
 技術的にややこしい内容もあるが、文化と不可分の情報通信技術の最前線が、人間ドラマを通して楽しく読める。
    ◇
 東京電機大学出版局・2835円