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父・西條八十の横顔 [著]西條八束 [編]西條八峯

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2011年08月28日

[ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■子と孫が立体的に描く実像

 子が父を語る、それを孫が編む。三代を結ぶ糸は畏敬(いけい)と信頼である。加えて直截(ちょくせつ)に評伝風に編んだのではなく、西條八十を見つめる子の目、その八十の家族関係、思い出の人々との交流、そこから生まれた詩や回想記、写真などを織り込んで立体的に近代日本の作詩家、ランボオ研究者の実像を浮かび上がらせる。
 子・八束は自然科学の研究者、大学教官としての社会生活のあと、改めて異分野の父の足跡を残そうと思い立つ。老いてから見つめる目の中に、八十とその妻晴子のさまざまな人生模様の哀楽が純化されていて、読む者に心地よさと笑みを与える。
 外面(づら)が良く学究肌、あふれる才能を時間を惜しんで作品化する真摯(しんし)さ、一方で女性関係に悩む母の苦悩も正直に明かされる。八十がランボオに惹(ひ)かれたのは彼の「精神は永い間詩人のままでいた」こと。改めて八十の童謡を口ずさむと「言葉からさまざまなイメージがわいて」困るといったその感性にうなずける。
    ◇
 風媒社・2310円

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