喜国雅彦「本棚探偵の生還」書評 収集欲をそそる美麗な造本
評者: 田中貴子
/ 朝⽇新聞掲載:2011年09月04日

本棚探偵の生還
著者:喜国 雅彦
出版社:双葉社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784575303391
発売⽇:
サイズ: 20cm/339p
本棚探偵の生還 [著]喜国雅彦
1、古書店が夢に出て来る。2、本棚の配列には一家言ある。3、本は見て、触って楽しむ。4、とくにミステリーが好み。以上の条件を満たす方に強くお勧めするのが本書である。その理由は、実際に手にとってもらえばわかる。
美麗函(はこ)入りの2冊組。著者が意匠を凝らした造本には、豆本に変身する月報まで付いている。2冊で異なる紙の質感を、指先でじっくり味わってほしい。電子書籍がコンビニならば、紙の本はアールデコ様式の老舗百貨店に匹敵することが実感できるだろう。
かつて、本は人々の憧れだった。高くて手が届かない棚にすました顔で並ぶ函入り本を、首が痛くなるほど見上げていた記憶はないだろうか。それは、読みたい、というより手に入れたいという欲求だったはずだ。
本蒐集(しゅうしゅう)の魅力を描くエッセーの第3弾である本書の内容については、あえて、読んでのお楽しみとしよう。本の外見だけに対する書評があってもいいと思う次第である。
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双葉社・2940円