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安心ひきこもりライフ [著]勝山実

[評者]斎藤環(精神科医)

[掲載]2011年09月04日

[ジャンル]社会

表紙画像

■けしからんが必読なのだ

 実にけしからん本だ。
 ひきこもりの第一人者(笑)たる評者の著書を「可もなく不可もない」と一刀両断。政府のひきこもり対策事業を「ひきこもり関ケ原」などと巧みに茶化(ちゃか)す(うっかりニヤニヤしたのは秘密だ)。この“名人”に「就労など煩悩に過ぎない」と言われては、治療者として返す言葉もない。
 ほかにも「腐れチャレンジ」「働かざること山の如く」「半人前理想主義」「自立とは正しく落ち込むこと」「月見草でいいじゃないですか」など名言金言が目白押し。目指すは罪の意識なく、のびのびひきこもる生活。そのための福祉サービス利用法、甥(おい)っ子とのつきあい方など、当事者ならではの超実用的なアドバイスまである。
 「可能性を広げるとは、堕(お)ちること」と主張する本書は、現代の小さな「堕落論」だ。なのに本書の「笑い」には逆説的な希望、評者には決して示し得ない希望がある。けしからんが必読なのだ。
    ◇
 太田出版・1470円



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