「安心ひきこもりライフ」書評 けしからんが必読なのだ
評者: 斎藤環
/ 朝⽇新聞掲載:2011年09月04日
安心ひきこもりライフ
著者:勝山 実
出版社:太田出版
ジャンル:教育・学習参考書
ISBN: 9784778312589
発売⽇:
サイズ: 19cm/227p
安心ひきこもりライフ [著]勝山実
実にけしからん本だ。
ひきこもりの第一人者(笑)たる評者の著書を「可もなく不可もない」と一刀両断。政府のひきこもり対策事業を「ひきこもり関ケ原」などと巧みに茶化(ちゃか)す(うっかりニヤニヤしたのは秘密だ)。この“名人”に「就労など煩悩に過ぎない」と言われては、治療者として返す言葉もない。
ほかにも「腐れチャレンジ」「働かざること山の如く」「半人前理想主義」「自立とは正しく落ち込むこと」「月見草でいいじゃないですか」など名言金言が目白押し。目指すは罪の意識なく、のびのびひきこもる生活。そのための福祉サービス利用法、甥(おい)っ子とのつきあい方など、当事者ならではの超実用的なアドバイスまである。
「可能性を広げるとは、堕(お)ちること」と主張する本書は、現代の小さな「堕落論」だ。なのに本書の「笑い」には逆説的な希望、評者には決して示し得ない希望がある。けしからんが必読なのだ。
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太田出版・1470円