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偏愛的数学 1驚異の数・2魅惑の図形 [著]A・S・ポザマンティエ、I・レーマン

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2011年09月11日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■世界が違って見える数の不思議
 「偏愛的」数学とは、よくも名づけたものである。
 本書は、こんな書き出しの訳者による序文から始まる。原題は「数学の驚異」とごくごく平凡で、「偏愛」なる表現はむろんない。邦訳に当たって編集部が考えたそうだ。
 だが、まさに言い得て妙。数学といえば、論証に偏りがちで、そこが嫌われがちなゆえんでもあるのだが、ここでは論証は脇に置き、数や図形の不思議、美しさ、面白さにひたすら偏愛を向ける。自称数学嫌いも含めて、幅広い読者を意識してのことだ。
 小川洋子さんの『博士の愛した数式』で、自分以外の約数の和に等しい6などの「完全数」や、220と284のように自分以外の約数の和が相手に等しい「友愛数」がおなじみになったが、数の不思議はこれにとどまらない。
 たとえば、こんな数だ。
 4913=(4+9+1+3)の3乗
 こんなのもある。
 153=1の3乗+5の3乗+3の3乗
 165033=16の3乗+50の3乗+33の3乗
 著者が「数学の金塊」と呼ぶこんな不思議な数の仲間は無尽蔵なのだそうだ。
 もっとも、2592を2の5乗9の2乗と書き間違っても、幸いなことに2592=2の5乗9の2乗という例は一つしかないらしい。
 一方、私たちの直感を裏切ることが多いのが確率だ。
 35人の中で少なくとも2人が同じ誕生日である確率は? 答えはなんと8割強だ。実際、米国の最初の大統領35人中、同じ誕生日が2人いる。ちなみに、命日では、独立記念日の7月4日が3人だが、こちらは必ずしも偶然とばかりいえそうにない。
 幾何学、つまり図形の世界でも、でたらめと見えて秩序が潜んでいたり、直感が裏切られたりと、こちらも驚きに満ちている。
 数学の驚異の一大コレクションをひたすら味わうもよし、あるいは、数学の海へとこぎ出してみるもよし。
 世界がちょっと、違って見えてくるかもしれない。
    ◇
 坂井公訳、岩波書店・1 2415円、2 2310円/Alfred S.Posamentier, Ingmar Lehmann 米独の数学教育者。



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