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福島の原発事故をめぐって [著]山本義隆/福島原発の闇 [文]堀江邦夫 [絵]水木しげる

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2011年09月18日

[ジャンル]社会

表紙画像

■論理と想像力で内奥えぐり出す

 福島の原発と原発事故を「あの人」はどうとらえているのだろう。そんなふうにぼんやりと思い浮かべていた「あの人」たちの本が出た。
 『福島の原発事故をめぐって』の著者山本義隆は、大佛次郎賞などを受賞した『磁力と重力の発見』全3巻などで知られる。その磁力と重力の先に、人間は原子力を発見し、原爆と原発を造った。
 山本は、東日本大震災と津波、福島の原発事故が「科学技術は万能という一九世紀の幻想を打ち砕いた」とみる。
 そして「自然にはまず起こることのない核分裂の連鎖反応を人為的に出現させ」るようなことは「本来、人間のキャパシティーを超えることであり許されるべきではないことを、思い知るべきであろう」と主張する。
 科学技術史の時間軸と戦後の国際関係という空間軸に原発をおいて、山本は論理の力でこの「怪物」を批判する。
 一方、『福島原発の闇』は、下請け労働者として原発の内部に入った堀江邦夫のルポと、水木しげるの絵で原発の「闇」をリアルに描き出す。1979年秋の「アサヒグラフ」に掲載された記事を改めて単行本にしたのだという。
 水木は、原発を外から見ただけで中には入っていない。それなのに、この絵の迫力はどうだろう!
 「マスクをかぶったときの息苦しさ、不快な匂い、頭痛、吐き気までもが甦(よみがえ)ってくる」と堀江は書いている。
 さきの山本が論理で原発を語るのに対し、堀江と水木は体験とそれに基づく感覚、そして想像力で原発の内奥にあるものをえぐりだす。
 論理と想像力。
 原発を考えるときには、これら二つが欠かせない。
 「原子力発電は、たとえ事故を起こさなくとも、非人道的な存在なのである」(山本)
 二つの著作は、ここで交差する。
    ◇
 『福島の原発事故をめぐって』みすず書房・1050円/『福島原発の闇』朝日新聞出版・1050円。



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