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赤い糸の呻き [著]西澤保彦

[評者]逢坂剛(作家)

[掲載]2011年10月09日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■事件を解決に導く推論の応酬

 カルトなファンが多い本書の著者は、ミステリーに本来なじまないSF的な展開や、超論理的解決を持ち込んだことで、評価が分かれるかもしれない。それを新しい工夫とみるか、アンフェアな手法とみるかは、読者の判断にゆだねられるだろう。
 ただし、この作品集はそうしたSF的手法を用いず、純粋のパズラーになっている。都筑道夫の「退職刑事」シリーズを思わせる、対話中心の構成をとる。つまり、もっぱら対話者の推論の応酬によって、事件を解決に導く〈安楽椅子〉ミステリー、といってよかろう。ことに、表題作の「赤い糸の呻き」は、論理の逆転に逆転が続いて、大いに楽しめる。
 特筆すべきは、登場人物の会話が生きいきして、眼前にその場面が浮かび上がることだ。実のところ、小説の会話は現実のそれとは違うものだが、近年は両者が限りなく近づきつつあり、本作品集はその一致を巧みにやり遂げた好例、といっていいだろう。
    ◇
 東京創元社・1785円

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