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延命医療と臨床現場―人工呼吸器と胃ろうの医療倫理学 [著]会田薫子

[評者]斎藤環(精神科医)

[掲載]2011年10月09日

[ジャンル]医学・福祉

表紙画像

■患者の幸せと家族の想い

 「胃ろう」をご存じだろうか。自力では食事がとれない患者の腹部に、胃に通ずる穴を開け、そこからチューブで水分や栄養を流し込む処置である。患者の苦痛が少なく管理しやすいため、わが国の高齢者医療の現場では二〇〇〇年代に入って急速に普及しつつある。
 しかし無意味な延命措置として、疑問視する声もある。本書は生命倫理という視点から「胃ろう」問題に焦点を当てたはじめての研究書だ。医師の知人が本書を熟読し快哉(かいさい)を叫んだ事実からも、いかに現場で待望されていたテーマであるかがうかがえる。
 食事がとれない認知症の患者に、一律に胃ろうを造設する行為には意味があるのか。専門家向けではあるが、医師へのインタビュー中心の構成は読みやすく、主張は明快だ。「本人の幸せよりも(延命させたい)家族の想(おも)いなんですよ」という医師のつぶやきは重い。「胃ろう」問題においては必読の文献となるだろう。
    ◇
 東京大学出版会・5040円

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