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柿のへた―御薬園同心 水上草介 [著]梶よう子

[評者]田中貴子(甲南大学教授)

[掲載]2011年10月16日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■時代小説にも草食系男子

 時代小説に女性読者が急増中だと聞く。「鬼平はいいなあ」とつぶやくオジサンよりも、通勤電車で高田郁(かおる)の「みをつくし料理帖(ちょう)シリーズ」を開くOLの姿が目につくのだ。
 時代小説に江戸時代を舞台としたものが多いことは変わらない。しかし、中身は「強い男たちの物語」から一種の成長物語へとシフトしている。本書もその一つだ。
 幕府が将軍のために薬草を栽培する小石川御薬園(おやくえん)の同心・水上草介(みなかみそうすけ)は、まだ22歳。名前の通りの草食系男子で、本草学には詳しいが、男装の剣の達人である千歳(ちとせ)には力も口もかなわない。彼の周囲で起こる小さな事件と本草の知識とが絡み合い、草介は少しずつ成長して行く。そして、長崎で蘭方(らんぽう)医修業する話が持ち上がる。草介、どうする?
 読後感はさわやか。薬草の知識と歴史の勉強も程よく楽しめる。この「程よさ」加減が万人に受けて、もっと読みたい気にさせているのは間違いない。ブレークの予感がする作品である。
    ◇
 集英社・1680円

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