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日本経済の底力―臥龍が目覚めるとき [著]戸堂康之

[評者]植田和男(東京大学教授)

[掲載]2011年10月23日

[ジャンル]経済 新書

表紙画像

■東北復興のために何が必要か

 本書は経済発展論、あるいは産業集積に関する空間経済学の成果を踏まえて、日本経済、および東日本大震災後の東北地方の問題点と可能性に迫った力作である。
 経済発展の源泉は技術進歩だが、著者によれば、そのためには各企業が単独で努力するのではなく、自らの周辺や海外の有力な企業、技術とつながりをもち、そこから革新へのアイデアを得ることが大切である。こうしたつながりは自由放任で生まれるのではなく、それを促進する政策の存在が決定的に重要となる。
 グローバルにつながるためには、TPPのような貿易促進策や、海外進出を目指す中小企業への情報、ネットワーク支援の仕組みが必要だ。国内でのつながりは産業の集積によって強化される。
 実際、企業がまとまって立地することによって生産性が全体的に上昇するという指摘は古くA・マーシャルにもみられる。本書では、これらの主張が様々な実証研究や豊富な例で裏付けられている。
 輸出で海外とつながった企業がさらに生産性を向上させるという分析結果や、中国のシリコンバレーである中関村の特区の例などが興味深い。後者では税制上の特典に加えて、大学とのつながり、海外企業、海外の中国人とのつながりが重視されている。
 震災前の東北では自動車や電気機械産業の企業の立地が増えつつあったが、グローバルなつながり、地元での集積の効果はまだまだであった。著者の主張は、復興のための特区構想などを利用して各地に高度な技術の産業集積を作り出すとともに、TPPなどで日本のグローバル化を促進して、復興のための努力を日本経済の新たな成長へのきっかけにしようということだ。
 同感である。まさにこうしたアイデアが政策の現場で真剣に議論されなければならない。急速に衰退国化しつつある日本に残された時間はあまり多くはないのである。
    ◇
 中公新書・777円/とどう・やすゆき 67年生まれ。東京大学教授。『途上国化する日本』など。

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