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女子学生、渡辺京二に会いに行く [著]渡辺京二、津田塾大学 三砂ちづるゼミ

[評者]後藤正治(ノンフィクション作家)

[掲載]2011年11月20日

[ジャンル]人文

表紙画像

■なすべきは自身を「磨く」こと

 〈日本近代〉との格闘者、渡辺京二。おそろしい批評者がまだいるというのが評者の渡辺観であるが、津田塾大学のゼミ学生とのトークがまとめられた。アンバランスな組み合わせであるが、そこが狙い目でもあったのだろう。
 女子大生たちが生真面目な問いを渡辺にぶつける。子育て、学校教育、発達障害、自己実現とやりがいある仕事などなど。渡辺は軽やかにいなしつつも自己体験を語り、モノの考え方の根本を披露していく。いまはやりの「自己実現」という言葉。渡辺流にいえば、人は生来、すでに存在として自己実現をしているのであって、今風の自己実現とは出世主義を言い換えたもの。そんなむなしい言葉にとらわれず、無名のままに自然体で生きなさいと諭す。なすべきは自身を「磨く」こと。
 問答はすれ違いつつ、女子大生たちは何事かを受け取っていったのだろう。老境にある作家が、囲炉裏端で孫娘たちと談笑している光景のごとくもある。
    ◇
 亜紀書房・1680円



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