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生きる力の源に―がん闘病記の社会学 [著]門林道子

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2011年11月27日

[ジャンル]医学・福祉

表紙画像

■550冊を分析、新分野開く

 人はなぜ「闘病記」を書くのか、その社会的意味は、などの問題意識をもとに、約550冊の闘病記を分析し、時代と病(主にがん)の関係を明かした書である。1970年代からの闘病記を見ていくことによって、図らずもがん治療の実態、告知、患者の受け止め方などの変遷がわかるのだが、著者の姿勢は、医療者と患者・家族の良好な社会的関係を創出したいとの点にあり、それだけにその分析は冷静で建設的である。
 闘病記からは、患者本人が「『病いと闘う』ばかりではなく、患者に本当のことを言わない時代の『衝撃』『苦悩』や、2000年代に入ってからは、病いとの『共生』『共存』」がわかるという。具体例で、そのことを実証しつつ、相互虚偽認識時代(医療者と患者ががんであることを、互いに知らないふりをする)の医療現場の苦悩には合点がゆく。悲しみを癒やすグリーフワークを論じ、家族論まで記述する多角さは、新しい分野の開拓書というべきであろう。
    ◇
 青海社・3200円



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