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バフェットとグレアムとぼく―インドの13歳少年が書いた投資入門 [著]アリャマン・ダルミア [訳]前田俊一

[評者]植田和男(東京大学教授)

[掲載]2011年12月11日

[ジャンル]経済

表紙画像

■13歳少年が説く、投資のイロハ

 あるヘッジファンドの親玉(インド人)が、片言の日本語で「日本人は金融の知識も経験もユダヤ人に全然かなわない。多分、中国人にもインド人にも。真っ向から勝負しないで、彼らと仲良くしておこぼれちょうだいを狙うことね」と言った。私は考え込んでしまったが、そうした主張を裏付けるような興味深い書物である。
 この投資入門書の最大の特徴は執筆者が13歳の少年だということだ。誰かの代筆だろうと思いたくなるが、彼は本書に基づきビジネススクールで講演などもしているというからやはり自筆らしい。もちろん、父とおじを有名な投資家に持つ財閥に生まれ、幼い頃から投資の話を見聞きし、勉強もしてまとめあげたのが本書である。特に先ごろ来日したバフェットとその先生のグレアムの投資哲学によるところが大きい。
 内容はおおむね標準的だが、そうでない部分もある。投資する前に自分を知らなくてはいけないと言う。周りの動きに流されやすいかどうか、自分の気質、強み、弱みを意識しつつ動かないといけない。株式市場と債券市場の方向感が矛盾していたら多くの場合、債券市場が正しい。そちらはより論理的に価格が形成されるから。市場と長年付き合いがある多くの人の実感だろうが、13歳の少年の言葉としては驚きである。
 他書と大きく違うのは分散投資を排し、集中投資を勧めている点である。投資に真剣味が出るし、効率もいいという。これはまさに著者の先生たちの哲学なのだろう。思うに、投資で財をなした人は、どこかで集中投資をして成功した人だ。それでないと大きくはもうけられない。だが成功する人はごくわずか。集中投資は結局ばくちに近い。
 いずれにせよ、13歳の少年がこれだけの知識を持ち、さらに周りがそれを出版させてしまうあたりが世界の金融文化の一側面である。
    ◇
 阪急コミュニケーションズ・1470円/Aryaman Dalmia 97年生まれ。インド在住の中学生。

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