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人と動物、駆け引きの民族誌 [編著]奥野克巳

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2011年12月11日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■過剰な捕食諫める伝承の深み

 人間と動物との関わりは、「狩る者」と「狩られる物」との関係から家畜化を経て、現代は愛玩動物に転じた。もっとも近代医学は実験動物としても利用してきた。
 人類史のこのサイクルの中で、愛玩動物はともかくとして、一貫しているのは〈殺して食べる〉という行為である。本書はこの関わりに「駆け引き」という語を挟んで文化人類学、あるいは民俗学的な分析を試みている。気鋭の研究者7人が、それぞれの専門分野の視点で現代の研究レベルを紹介するのだが、今なお狩猟で動物を食する民族、自分たちの祭礼のために供犠となる動物(なぜか牛が多いのだが)への敬意、さらには特別な儀式を行い神の意味をもたせて決して殺さない飼育習慣など、南アジア、東アフリカ、中国・新疆ウイグル自治区、エチオピアなどの種族の関わりを、語り続ける。
 過剰な捕食を諫(いさ)め、神と崇(あが)める民話や伝承の深みに驚かされる。この歴史に傲岸(ごうがん)さを持ち込む現代人への批判が小気味いい。
    ◇
 はる書房・2415円

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