日本代表・李忠成、北朝鮮代表・鄭大世―それでも、この道を選んだ [著]古田清悟,姜成明

[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)  [掲載]2011年12月11日   [ジャンル]ノンフィクション・評伝 

■「在日」エース2人の宿命と覚悟

 9月2日、埼玉スタジアムで行われたサッカー日本代表×北朝鮮代表戦。そのピッチには、ともに日本の朝鮮学校を出た2人のストライカーが立っていた。しかし、着ているユニホームは別だった。日本代表の李忠成と北朝鮮代表の鄭大世。2人はなぜ異なった選択をしたのか?
 李は当初、U19韓国代表候補に選出されたが、サッカースタイルの違いと周りの不穏な空気に戸惑う。そんな時、父のアドバイスを受け、帰化への道を歩み出した。一方、鄭の母は民族教育に熱心な朝鮮学校の音楽教師だった。父は韓国籍。しかし母の熱意に感化され、鄭は北朝鮮のパスポートを取得する。
 今や2人は両国のエースストライカー。著者は、両者を通じて国や民族、アイデンティティーの問題に迫ろうとするが、問いはピッチの上で空転する。なぜなら、そこにはゴールを狙う若きサッカー選手の姿しかなかったからだ。
 人間の宿命と覚悟を問う渾身(こんしん)の一冊。
    ◇
 光文社・1470円

中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)の他の書評を見る

この記事に関する関連記事

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る

ブック・アサヒ・コム サイトマップ