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「日本代表・李忠成、北朝鮮代表・鄭大世」書評 「在日」エース2人の宿命と覚悟

評者: 中島岳志 / 朝⽇新聞掲載:2012年12月11日
日本代表・李忠成、北朝鮮代表・鄭大世 それでも、この道を選んだ 著者:古田 清悟 出版社:光文社 ジャンル:スポーツ

ISBN: 9784334976668
発売⽇:
サイズ: 19cm/285p

日本代表・李忠成、北朝鮮代表・鄭大世―それでも、この道を選んだ [著]古田清悟,姜成明

 9月2日、埼玉スタジアムで行われたサッカー日本代表×北朝鮮代表戦。そのピッチには、ともに日本の朝鮮学校を出た2人のストライカーが立っていた。しかし、着ているユニホームは別だった。日本代表の李忠成と北朝鮮代表の鄭大世。2人はなぜ異なった選択をしたのか?
 李は当初、U19韓国代表候補に選出されたが、サッカースタイルの違いと周りの不穏な空気に戸惑う。そんな時、父のアドバイスを受け、帰化への道を歩み出した。一方、鄭の母は民族教育に熱心な朝鮮学校の音楽教師だった。父は韓国籍。しかし母の熱意に感化され、鄭は北朝鮮のパスポートを取得する。
 今や2人は両国のエースストライカー。著者は、両者を通じて国や民族、アイデンティティーの問題に迫ろうとするが、問いはピッチの上で空転する。なぜなら、そこにはゴールを狙う若きサッカー選手の姿しかなかったからだ。
 人間の宿命と覚悟を問う渾身(こんしん)の一冊。
    ◇
 光文社・1470円