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あやしい統計フィールドガイド―ニュースのウソの見抜き方 [著]ジョエル・ベスト [訳]林大

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2012年01月22日

[ジャンル]社会

表紙画像

■見分けるポイント、実践的に

 私たちの社会は、ありとあらゆる種類の数字で語られる。どんな種類の犯罪が増えているのか、どんな病気が増えているのか、あるいは、子どもの学力は? 人々の収入は? それが、私たちの社会観を形作り、政策の基礎にもなる。
 ところが、やっかいなことに、統計はうそをつく。数字の取り方次第で、全く違った印象を与えることができる。
 フィールドガイドと銘打った本書は、こうしたうそを見抜く実践的アドバイスを、具体例を挙げながらコンパクトにまとめている。
 まず、最初に強調されるのが、たとえば年間の出生数など、基本となる数字をいくつか知っておいたり、あるいは調べたりすること、そして、最も重要な経験則、つまり、一般に死者よりけが人の方が多いように、重大な結果ほど頻度は低いことを頭に置いておくことだ。
 ごく当たり前のようだが、これだけでも、疑わしい数字を見分けることができる。
 いったん流布すれば、あっというまに広がってしまうネット時代、「おかしい統計の息の根を止めるのは、吸血鬼を殺すよりむずかしい」からこそ、大切な原則だ。
 そのうえで、メディア、あるいは、ある問題を訴えたい人たちが、どうやってデータにインパクトを持たせるのか、それを見抜くポイントは何か、を挙げる。
 急に肥満が増えた、というデータの裏には、肥満の定義の変更があるかもしれない。あるいは、比較する年代の選び方次第で、全く違った結論が出てくる場合もある。
 「よい統計」の見分け方も重要だ。作り方などの情報が明示され、一貫性があり、異論に対しても開かれていることがその条件だという。
 現代社会では、数字に惑わされることなく、賢く使うことが欠かせない。「統計リテラシー」の重要性を再認識させる一冊だ。
    ◇
白揚社・2310円/Joel Best 米デラウェア大教授。『統計はこうしてウソをつく』など。

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