書評・最新書評

肉食妻帯考―日本仏教の発生 [著]中村生雄

[評者]田中貴子(甲南大学教授)

[掲載]2012年01月29日

[ジャンル]人文

表紙画像

■土着の信仰を取り入れ発展

 日本の仏教は堕落している。肉を食べ、妻帯する僧など言語道断だ。そういってはばからない人に問いたい。一体「本当の仏教」などあるのか、と。どんな宗教も、伝播(でんぱ)の過程で土着の信仰を取り入れ、その地特有の発展をしてきたのであり、それは日本とて例外ではない。古代からの自然神信仰と習合した仏教は、「日本仏教」という独自の姿を生み出したのである。
 日本は、肉食を忌む大乗仏教を受け入れながら、神へイケニエを捧げる習俗の記憶を持ち続けた、と著者は言う。殺生してはいけないが、生物を食べなければ生きて行けない人間。そのせめぎあいを思想的に昇華したのが親鸞だが、近世の真宗は肉食と女犯(にょぼん)の問題を一対となし、教団を支える教理的紐帯(ちゅうたい)へと変貌(へんぼう)させた。近代でも、国家による仏教の抑圧がなされた。
 正面切って議論されてこなかった肉食妻帯をキーワードとし、日本仏教の根幹に迫る著者の遺稿集。遺(のこ)された言葉の重みを受け止めたい。
    ◇
青土社・2520円



関連記事

ページトップへ戻る