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女子をこじらせて [著]雨宮まみ

[評者]穂村弘(歌人)

[掲載]2012年02月12日

[ジャンル]人文

表紙画像

■イケてない女の悲しみ、炸裂

 本書に描かれているのはイケてない人間の生き辛(づら)さ、そして女の生き辛さ、つまり、イケてない女であることの生き辛さだ。珍しいテーマではないと思う。にも拘(かか)わらず、実際に読んでみると、新鮮な衝撃を受ける。
 例えば、父親に「お前の下着は自分で洗え」と云(い)われたとき、高校生の「私」は心の中で叫ぶ。
 〈お前の娘はな、お前はどう思ってるか知らんが、夜道に人気(ひとけ)のない道路にほっぽりだしておいても、誰も襲わないようなそんな容姿の女なんだよ、そんな女が女らしいとか恥じらいとか関係あるか! お前の娘の下着なんて、誰も盗まない、誰も価値を感じない、ブルセラショップでも絶対に売れない、そんなゴミみたいなもんなんだよ、それを自分で洗えとか何言ってんの? こんなゴミみたいなもん、誰が洗おうがどうでもいいじゃん。洗濯機だし!〉
 あまりに唐突な悲しみの炸裂(さくれつ)に驚きながら、目が離せなくなる。「私」にも本当は父親の気持ちはよくわかっている。だが、それを受け入れる余裕がないのだ。
 このような苦痛は「私」が女であることと深く関わっている。その意味では読者としての自分が完全に感情移入することは難しい。でも、不思議に惹(ひ)きつけられる。
 その語り口があまりに身も蓋(ふた)もなく、捨て身の混乱に充(み)ちているからだ。生きることの苦しみが、こんなにも生き生きと語られていることに感動する。
 読み進むにつれて、「私」のぎりぎりの迷走が、その叫びが、結果的に男女の関係性から社会の在り方までを照らし出してゆく。地べたからライトアップするような光の中に、それらの姿が浮かび上がるとき、あれ? 「これ」ってこんな風だっけ、僕が知ってる「あれ」とは全然ちがうじゃないか、とびっくりさせられる。新しい景色が見える。
    ◇
 ポット出版・1575円/あまみや・まみ ライター。共著書に『エロの敵』『リビドー・ガールズ』がある。

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