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番犬は庭を守る [著]岩井俊二

[評者]

[掲載]2012年02月26日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 原発事故で放射能まみれになった未来を舞台にした小説である。繁殖力が衰えた人類にとって、生殖能力こそがカネの源で、子を持つことはエリートの証し。臓器移植で「汚染」の少ない体になる行為も横行する。露骨な選別で命の価格は上がる一方、尊厳はとことんおとしめられるさまが、映像的な筆致で迫り来る。実在の地名や人名をもじった固有名詞のうち、極めつきは時代の弱者である主人公ウマソー・イアザッド。「生まれて、すみません」という声が聞こえてきそうである。結末に差すほのかな希望に、人間へのぎりぎりの信頼が投影される。地をはうような目線の低さが、極限下で変わるものと変わらぬものを、生き生きと描き出す。
    ◇
幻冬舎・1470円

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