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水を守りに、森へ 地下水の持続可能性を求めて [著]山田健

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2012年02月26日

[ジャンル]人文

表紙画像

■社会貢献でなく企業の本業で

 サントリーで長くコピーライターを務めた著者は21世紀が迫ってきたころ、ふと、同社の事業がいかに「地下水」に依存しているかに気づく。同時に、その地下水が、森林の荒廃によっていかに危うい状況に置かれているかも。
 以来10年余りにわたって、地下水を涵養(かんよう)する森を守ろうと日本中を奔走してきた経験が、軽妙につづられる。
 ユニークなのは、企業の社会貢献ではなく、本業としての位置づけだ。水に生かされている会社が水を守るのは当たり前というわけだ。
 ミネラルウオーターなどを生産する工場の周辺で、約7千ヘクタールの森林を整備してきた。山手線を一回り大きくしたとてつもない広さだが、日本全体では微々たるものだ。
 広大な森林を守るには、国や自治体の力だけでは到底足りない。多くの企業に、本業に近いところで森林に目を向けてほしい。そう提案する。
 「だれか」ではなく「私」の問題としてとらえてこそ。今こそ必要な発想の転換だ。
    ◇
 筑摩選書・1575円

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