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写真の読み方―初期から現代までの世界の大写真家67人 [著]イアン・ジェフリー

[評者]石川直樹(写真家・作家)

[掲載]2012年03月11日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■挑発的に響きあう熱い含意

 著者は、これまで写真史、美術批評の分野で卓越した知見を示してきた。本書では、写真の黎明(れいめい)期から現代までの写真家67人と2度の大戦中に撮影された写真を取り上げ、写真に包含される様々な意味を読み解いている。
 タイトルこそ素っ気ないが、中身は写真家の概説に留(とど)まるものではなく、ましてや指南書の類でもない。本書はそれぞれの写真家同士の関係を含め、章と章が重奏的に響き合い、強いて言うならば“写真史に関する挑発的な資料”といった側面を持っている。写真家の名によって章立てされているが、その中に「第一次大戦」「再殖民局 農業安定局」「第二次大戦」という項があえて設けられていること、また写真家によって割かれるページ数が異なっていること、さらに取り上げられている図版が誰もが見知っている代表作ばかりでないことなどがその理由である。
 著者がアメリカの「再殖民局」と、そこから飛び出してきたウォーカー・エヴァンス、ドロシア・ラング、ベン・シャーンなどを重点的に紹介しているところが、いい。有名なキャパが4ページで簡潔に語られているのに対し、エヴァンスには14ページも割いている。「1929年のエヴァンスの出現は突然であり、それは深く調べるに値する」という言葉通り、その章は熱を帯びていた。
 日本人では東松照明、中平卓馬、森山大道の3人が取り上げられている。著者は、写真史において「中平のように、世界の終わりの恐ろしい感覚を持った者は誰もいなかった」と高く評す一方、「中平は操作された痕跡のない図鑑のような純粋な写真で再出発を誓ったが、そのような想像力による未来の遂行は夢想にすぎなかった」と断じる。
 『写真の読み方』をどう読み解くか、それは写真家としての自分の立ち位置を相対化するための問いにもなるだろう。
    ◇
 内藤憲吾訳、創元社・3990円/Ian Jeffrey ロンドン大などで教鞭(きょうべん)を執る。『写真の歴史』『写真の本』

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