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この海に [著]高橋順子

[評者]

[掲載]2012年03月18日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 アイルランドのシェークスピアと呼ばれる劇作家ジョン・ミリントン・シングが1902年に書いた戯曲を、日本の詩人が短編小説に仕立てた。原作は、アイルランド西端のアラン島を舞台に、船乗りや漁師だった夫や義父、5人の息子たちを荒ぶる海に奪われてきた老女モーリアの悲劇。最後に残った末の息子も海に落ちて死ぬ。モーリアがすべて神の定めと受けいれ、「これで、いいんだよ」とつぶやく結末は印象深い。
 著者が小説化を思いたった背景には、故郷千葉県の九十九里浜を昨春襲った大津波がある。小説化によって、人生の深淵(しんえん)をのぞきこむ、詩情豊かな物語としてよみがえった。原作も英文で収録している。
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デコ・1470円

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