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生老病死の図像学―仏教説話画を読む [著]加須屋誠

[評者]田中貴子(甲南大学教授)

[掲載]2012年03月18日

[ジャンル]歴史 医学・福祉

表紙画像

■中世の仏教絵画を読み解く

 絵は写実である——現代人の多くはそう考えがちだ。もちろん、鎌倉時代の絵を観(み)て当時の人々の風俗を知ることはできる。しかし、それが絵のすべてと思ったら大間違い。以前『ダ・ヴィンチ・コード』という小説や映画がヒットしたとき、絵に隠された意味を読み解く教授が主人公だったことを思い出してほしい。画面に描かれたモノには、象徴的な意味があるのだ。
 本書は、中世の仏教絵画を題材に、隠された意味を読み解いてゆく。この方法についてはプロローグに詳述されるが、敢(あ)えて第一章から読むことをお奨(すす)めする。「生老病死」とは仏教の言葉で、人間に平等に訪れる四つの苦のこと。なぜ老人は子どもと一緒に描かれるのか、出産や死を中世人はどうとらえていたかという疑問が、絵の具体例にそって解明されてゆく。読後、プロローグに戻ると、「絵を読む」理論が頭に入りやすい。
 著者の仮説が先走りする傾向があることと、モノクロ図版が見づらいのが残念だ。
    ◇
 筑摩選書・1890円

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