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長寿と性格―なぜ、あの人は長生きなのか [著]H・S・フリードマン、L・R・マーティン

[評者]横尾忠則(美術家)

[掲載]2012年03月25日

[ジャンル]人文

表紙画像

■ジョギングよりも勤勉性

 高齢化社会の日本ではこれ以上長寿が増加すると問題の上に問題を積み重ねることになるけれど、米国で約1500人を対象に80年間追跡観察した結果、長寿は生き方のパターンにあるというデータを発表した博士がいる。それによると従来の健康に関する常識が通用しないことになる。
 医療側の健康論理ではなく健康と長寿のカギを握っているのは性格で、最も重要なのは「勤勉性」だという。ダイエットもジョギングも関係ない。慎重、注意力、責任感、礼節、計画性、ねばり強さ、思慮深さ、社交ネットワークなどなどだ。そこで僕はふと三島(由紀夫)さんの性格を思い出した。だが彼は自死を選んだ。とするとこの研究は当てはまらない。しかし、「この世の終わり」と解釈するタイプの悲観論者は事故や事件、自殺で亡くなる短命の確率が他より高いという。すると彼の憂国の思想が逆転劇を誘発したともいえる。
 著者は、専門家の多くが今後、寿命は短くなると予想しているという。理由は、国民が健康のためのアドバイスを守らないためだが、著者によれば健康のための政策の方こそ間違っているのだ。
 この研究を行ったルイス・ターマン博士はもともと、才能があって成功した人の秘訣(ひけつ)を探るのが目的だったが、同じことが健康と長寿に関しても言えることを発見した。
 本書は長寿の性格と同時に短命の性格も指摘している。芸術家には長寿が多いが、中には長寿の条件に反する性格パターンの持ち主もいるだろう。にもかかわらず長寿なのは、博士の挙げる条件の他にも別の因子がありそうだ。
 例えば芸術家は「勤勉性」の他に、創造に伴う本能的な感性や霊感の受信能力が異常に敏感であるというようなことも長寿の条件に加えなければ、芸術家の異端的な性格にもかかわらず長寿であるということが理解しにくくなるからだ。
    ◇
 桜田直美訳、清流出版・1785円/H.S.Friedman▽L.R.Martin いずれも米国の心理学者。

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