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なぜデザインが必要なのか [著]エレン・ラプトンほか

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2012年03月25日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■問題解決への知恵と技術

 「デザイン」と聞いたときにすぐ頭に浮かぶのは、「意匠」、つまり、さまざまな製品の色や形、模様のことかもしれない。
 だが、英和辞典をひもとけば、考案する、計画する、設計する、といった言葉が並ぶように、実はもっと広い意味を持った言葉だ。本書は、それを豊富な実例で見せるとともに、この言葉が今日の重要なキーワードでもあることを教えてくれる。
 本書のもとになったのは、米ニューヨークにあるクーパーヒューイット国立デザイン博物館で行われた、2010ナショナルデザイントリエンナーレ「なぜ今デザインなのか?」と題された展覧会だ。
 エネルギー、コミュニティー、健康、豊かさなど八つのジャンルに分け、世界中から選ばれた138のプロジェクトが紹介されている。人々が「より健康に、より豊かに、より快適に暮らし、同時に、人と人の住む地球の生態系とが調和を取り戻す」ためのデザイナーたちの模索、である。
 中身は多岐にわたる。構想中、あるいは建設中の未来志向都市があれば、ロサンゼルス地震に備えるためのデザイン、途上国の水浄化システムや呼吸器疾患を防ぐコンロ、さらには、泥の中の生物の代謝を利用してエネルギーを作る泥ランプもある。
 日本からは、使い捨てでも美しい「WASARA」食器やホンダの人型ロボットアシモから派生した下半身サポートシステムなど数点だ。
 登場する人の中には、建築家やエンジニア、工業デザイナーと呼ばれる人がいれば、市民や起業家もいる。重要なのは、個々の専門を超えて、私たちが持つ知恵でも技術でも総動員して、世界が抱えるさまざまな問題への解決策を見いだそうとする取り組みであり、それこそがデザインだ、ということだろう。
 日本の潜在力を生かすためにもっとデザイン力を。そんなメッセージも読み取れる。
    ◇
 北村陽子訳、英治出版・2520円/米クーパーヒューイット国立デザイン博物館のEllen Luptonら4人で執筆。

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