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下り坂では後ろ向きに 静かなスポーツのすすめ [著]丘沢静也

[評者]田中優子(法政大学教授・近世比較文化)

[掲載]2012年04月08日

[ジャンル]人文

表紙画像

■競技スポーツからの脱出を

 ただのハウツーものではない。「より速く、より強く、より高く」という競技スポーツから脱出しよう、という価値観の転換を提起している。競技スポーツは競争社会における仕事と同じ文法であって、「静かなスポーツ」は生命・生活・人生の文法である、という考えだ。三・一一以前にはなかなか言えなかった思想が次々に表明されている。実践し考えてきたことが、ようやく共感を得るようになったからであろう。本書もその一冊、と見た。
 ハウツーものとしても充分に役立つ。大事なのは回数や距離ではなく、時間を区切ることだという。泳いでも走っても三十~四十分でやめましょう、なぜなら人生は短いから、という提案には大いにうなずいた。スロートレーニングを取り入れれば、筋トレもニュースを見ながら時間を区切って充分に効果があるそうだ。著者はドイツ文学者。毎日を生きることと体を動かすことが文章の中でしっかり結合している。
    ◇
 岩波書店・1890円

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