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なぜメルケルは「転向」したのか ドイツ原子力四〇年戦争の真実 [著]熊谷徹

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2012年04月08日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■定点観測でたどる脱原発の道

 福島原発事故の発生から3カ月後、ドイツ連邦議会は、原子力法の改正案を可決し、遅くとも2022年末までに原発を完全に廃止することを決めた。なぜ、ドイツは脱原発への道を開くことができたのか? 本書は、原発をめぐる過去40年間のドイツの歩みをたどりながら、右の問いへの答えを示す。
 東独出身の首相メルケルは、かつては研究所に勤務する物理学者だった。ドイツ統一後に政界に転じ、環境相を務めたが、原発は必要だと考えていた。そのメルケルが福島原発事故のあと、自分の考えは誤っていたと率直に認め、脱原発に「転向」した。「日本ほど技術水準が高い国も、原子力のリスクを安全に制御することはできない」のだから、と。
 緑の党の穏健化と支持の広がり、原発をめぐる論争の変遷、リスクに対するドイツと日本の意識の違いなど、20年以上ドイツで活動してきた著者ならではの「定点観測」の視点が生きている。
    ◇
 日経BP社・1680円

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