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日本人の死生観を読む―明治武士道から「おくりびと」へ [著]島薗進

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2012年04月15日

[ジャンル]人文

表紙画像

■死に関する意識の変容たどる

 本書は「近代の死生観表出のさまざまな様態」を見つめた書、と著者は言う。なるほど、宮沢賢治、加藤咄堂(とつどう)、新渡戸稲造、藤村操、志賀直哉、柳田国男、折口信夫、吉田満、高見順など多様な人物が説いた死生観の意味とその背景を描きつつ、日本人の死に関する意識がどう変容しているかを丁寧に説明していく。具体例を引いているだけに読む側の死生観がどう形づくられているかを思わず問い直したりもする。
 とくに印象的なのは宮沢や志賀、それに柳田、折口に見る独特の死生観の分析、仏教の教化者加藤の論説を詳細に透視しての著者の解釈などだが、本書が最も訴求力を持つのは、明治国家が祖霊信仰を持つ共同体や「氏神=家の神=先祖の集合体」に課した儀式が、必ずしも常民の信仰とは一体でなかったとの指摘だ。柳田の論を紹介するこの部分はきわめて重要である。
 全体に本文の記述が直線的でない分、著者自身の死生観が感じられ共感を覚える。
    ◇
 朝日選書・1470円

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