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核燃料サイクル施設の社会学―青森県六ケ所村 [著]舩橋晴俊、長谷川公一、飯島伸子

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2012年05月06日

[ジャンル]社会

表紙画像

■開発計画から排除された村民

 使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを回収し、高速増殖炉などで使用する「核燃料サイクル」計画は、エネルギー自立の切り札として長年、政府、電力会社によって推進されてきた。その関連施設が下北半島の青森県六ケ所村に集中する。しかし、1993年に着工した再処理工場は相次ぐトラブルで今も稼働していない。核燃の拠点というより、全国の原発から出る放射性廃棄物の埋設地、貯蔵地となりつつある。
 本書は、69年の新全国総合開発計画に始まる六ケ所村の開発史をたどり、地域社会の変容、村民の意識の変化などを社会学の手法によって分析する。98年刊行の『巨大地域開発の構想と帰結』(東京大学出版会)をもとに、その後の調査結果を加え、福島原発事故をふまえて大幅に加筆、改稿している。
 六ケ所村の人口は、60年代の約1万3千人をピークに、一時は1万人を切った。それが、93年の再処理工場着工を境に増加に転じ、2000年には約1万2千人まで回復した。村の財政力は県内40市町村のトップだという。
 だからといって村民は、核燃施設との共存に異論がないのではない。「別の方法で雇用が確保されるなら、核燃施設は縮小したほうがよい」という村民が6割、施設の安全性に不安を感じる村民が7割近くを占める。
 その村民たちは、開発計画の策定、推進の過程から事実上、排除されてきた。声をくみあげて反映する回路がそもそもなかった。村の女性の語る言葉が痛切だ。
 「反対なら反対なりに、賛成なら賛成なりにどんどん話をする人や地元の指導者を送りこみ、皆で話し合いをすれば良かったと思う。そうすれば、こんな骨肉相食(は)むような状態にはならなかっただろうに。その場が一つもなかった」
 戦後日本の地域開発とは一体、何だったのだろうか。
    ◇
 有斐閣選書・2520円/ふなばし・はるとし、はせがわ・こういち、いいじま・のぶこ

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