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未来国家ブータン [著]高野秀行

[評者]松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学)

[掲載]2012年05月06日

[ジャンル]人文 国際

表紙画像

■他の国とはまるで違う進化

 昨年の国王夫妻の来日以来かなりのブームを巻き起こしているブータン。ヒマラヤの小国なのに国民の幸福度は世界一ともいわれ、そのユニークな国情に注目が集まっている。当然、さまざまな「ブータン本」が世に出ているが、辺境探検の第一人者が書いた本書は抜群のおもしろさだ。
 ブータンの生物資源を調査するという建前と、雪男など未知の生物について情報収集したいという本音を胸に、著者は首都周辺の「都市部」だけでなく、山間の少数民族の村にまで旅をする。高山病や下痢に悩まされたりしながら四千メートル級の峠も徒歩で越え、行く先々で興味深い伝承を記録し、その土地ならではの風習に触れて、「世界の他の国とはまるでちがう進化を遂げている」ブータンの、知られざる一面を伝えてくれている。ブータンでは若者が進路を決める際の選択肢は多くない。意外にもそれが、迷いなく生きられる背景となっているという指摘に、「うーむ」と考えさせられた。
    ◇
 集英社・1575円

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