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理系の子―高校生科学オリンピックの青春 [著]ジュディ・ダットン

[評者]川端裕人(作家)

[掲載]2012年05月13日

[ジャンル]科学・生物 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■無邪気な知的好奇心と探究

 数学オリンピックのように「理系」の国際大会があることは有名だが、北米で盛んな「サイエンスフェア」についてはあまり知られていないと思う。英語で「フェア」というと、家畜や農作物の品評会を連想するのだが、サイエンスフェアもまさに学生たちが研究成果を持ち寄り優劣を競う。まず地域大会があり、最終的には全米大会(国際大会を兼ねる)へと階段がつながっている。上位入賞者には高額賞金が与えられたり、スポンサーが付いたり、若い才能を発掘する、まさに「品評会」として機能している。
 本書は、サイエンスフェアの最高峰である国際学生科学フェアの2009年大会参加者を中心に「理系」高校生の青春を浮き彫りにした爽やかなノンフィクションだ。
 まず度肝を抜かれるのは、「出品」される研究の水準の高さ。小型の核融合炉を製作した生徒、ナノテクノロジーの研究で賞を取り18歳にして最先端技術企業を興した生徒、化学企業デュポン社の城下町で、飲料水に工場由来の有害化学物質が含まれることを示し、除去法を確立した生徒、自閉症のいとこのために体系だった教育プログラムをつくり普及させた生徒……。
 おおよそ「こども」の研究とは思えないものが目白押しだ。そこに至るまでの試行錯誤、挫折を克服するプロセス等々がいきいきと描かれており、読み物として楽しい。
 と同時に、科学の営みが、基本的に無邪気なものなのだと強く印象づけられた。悪用も可能かもしれない核融合炉に象徴されるように、生徒たちの知的好奇心と探究は、それが社会にもたらすことの「善悪」の問題とは無縁だ。興味あることに突っ込んで行って一直線に進む。これは基本的に「大人の科学」も同様だろう。知的好奇心の発露を好ましく思いつつ、科学が応用される時にしばしば発生する問題をいかに統御するかとふと考えさせられた。
    ◇
 横山啓明訳、文芸春秋・1785円/Judy Dutton 科学と人間との関わりを軸に取材・執筆活動を続ける。

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