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「股間若衆―男の裸は芸術か」書評 別の鑑賞法でがぜん面白く

評者: 田中優子 / 朝⽇新聞掲載:2012年05月13日
股間若衆 男の裸は芸術か 著者:木下 直之 出版社:新潮社 ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784103321316
発売⽇:
サイズ: 20cm/190p

股間若衆―男の裸は芸術か [著]木下直之

 駅前や公園に立つ裸体彫刻を見るたびに「なぜこのようなものがここに?」と不思議に思っていた。申し訳ないが、全く芸術的感動が無いからである。しかし本書を読めば見方が変わる。いや、芸術的価値に目覚めるわけではない。全く別の鑑賞法に気付いてがぜん面白くなるのだ。まず股間に注目する。それこそが、日本彫刻史の要だった。明治四十一年に初めて男性裸体の彫刻が日本に出現する。ギリシャローマ彫刻の歴史的土台がないところに突然裸が現れるわけだから、作る側は西欧崇拝でも、人々はどこを見ればよいかわからなかったろう。その都度警察が来る騒ぎとなる。その結果、股間は曖昧(あいまい)な形になる。「股間若衆」「駅前四天王」「曖昧模(も)っ糊(こ)り」というステキなキャッチフレーズと実に愉快な文章に、笑いを抑えられない。やがて近代日本美術史の基礎知識が身につき、赤羽や前橋駅に下りたくなり、ついに社会における表現と規制の関係に思いを致す。実にお得な本である。
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 新潮社・1890円