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ある女流詩人伝 [著]池内紀

[評者]

[掲載]2012年06月03日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

 「唇はよく詩にうたわれる/胸もよく詩にうたわれる/でも、ほかのところがどうしてうたわれないのかしら?/深い理由があるのかしら?」。こんなエロチックで、どこか天然な詩を書いたユーリエ・シュライダー(1882〜1939)という詩人がドイツにいた。女学校を出て小間使になり、30歳で結婚。ナチスの支配下で、ユダヤ人だった彼女は57歳のときに入水している。
 生涯に2千編以上の詩を書いたのに、文芸誌には一度ものらず、大半は死後に見つかった。定型と押韻という旧来の詩法を守り、素朴で稚拙だけれど、その性愛詩はいま読むと新しい。故国でも知られざる愛らしくも切ない詩人の人生を、著者は軽やかによみがえらせた。
    ◇
 青土社・1890円

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